『これぞ暁斎!』展に行ってきました!

私は晴れ女を自負しているが、その日はどうも不調で細い雨がぽつぽつと桜の花を散らしているような天気だった。

空はパッとしないが行き先に思いを巡らせれば足取りは軽い。渋谷Bunkamura『ゴールドマンコレクション これぞ暁斎!』展。洋装のガイコツが三味線を弾くハイカラなポスターの話をしたら友達からお誘いが来たのだ。

▼帰りに買った図録。トートバック付につられました。

午前11時、入場のための列はなかったが入り口付近から混雑はうかがえた。最初の展示群「序章 出会い」の紹介として、この展示作品の所蔵家であるゴールドマン氏の言葉が目を引く。

「暁斎は楽しいからですよ!」

だから集めてるんです、と。当たり前だけど、楽しくないと続かない。楽しい、を育てるとこんなに大きな展示会になってしまうのかと、なんだかうらやましかった。

実は私は暁斎についてはほとんど知らないまま今日を迎えてしまった。ハイカラな浮世絵描いてる人、というなんとも雑なイメージしか持ち合わせがなかった。

暁斎の略年表に歌川国芳の名前を見つけた。そういえば去年の今頃もBunkamuraの”くにくに展”(『俺たちの国芳 わたしの国貞』展)に足を運んだ。来年あたりは暁斎の兄弟弟子という月岡芳年の展示をやってくれないだろうか。

展示室でまず目に入ったのは「象とたぬき(No.001)」だった。浮世絵の象のイメージは、いつも三日月形のちょっと意地悪そうな目をしている印象があったが、暁斎の象は優しげなたれ目をしていた。

「……あのタヌキって、タヌキに見えますか?」という隣の友人がささやく。ちょうど同じことを思っていたので、うやむやにしてごまかした。

ちょっとした人だかりが見つめる先には神輿――ではなく、「鯰の曳き物を引く猫たち(No.010)」擬人化した猫がナマズのひげを引っ張っていた。

「この猫、あれに似てない?あれ、モンハンの猫」と前の女性客が笑う。最近私も狩人に復職したが、そんなシーンには遭遇したことはない。でも、わかる。むしろ遭遇したい。

つづく第1章のタイトルは「万国飛」世界中に飛び立っていった暁斎のカラスを指す言葉らしい。

暁斎の家で飼っていたカラスなのか、同じ枯れ木で左を向いたカラスを描いた作品が多かった。伊藤若冲も家の中に鶏を放し飼いにしていたと、先日読んだ小説が頭をよぎる。

カラスを描く墨の掠れを見ながら、高校の美術部の顧問から「黒と白は使いすぎちゃだめよ。絵の印象がぼけるから。」と言われたのを思い出した。暁斎のカラスほどコントラストを強くすれば、ぼけることも無いのだろうか。

第2章「躍動するいのち」では、暁斎の鳥の描き方が紹介されていた。

曰く、「暁斎はまず鳥を観察し、描くときにはその場を離れ記憶によってできるだけ紙に書いてみる」という。

先ほどまで見てきたカラスや他の生き物は、観察しながら描いていないのか。どれほど描き尽くせば、今ここに残るような1点ができあがるのだろうか。

描き方を知ったからか、絵の見方も変わってくる。「月下猛虎図(No.031)」なんて、きっと猫をみて描いたに違いない。獲物を狙う目が愛らしいではないか。

暁斎のきつねには主人公が描かれないのだろうか。「狐の宮参り(No.039)」では初宮参りとなる子ぎつねは、馬に乗ったきつねに抱えられているのか姿が見えない。

そういえば序章で見た「狐の嫁入り(No.005)」も花嫁行列は構図の奥にうっすらと描かれており、提灯を持ったお付きの者のようなきつねが手前に描かれていた。

ふと、一枚の絵に目が釘付けになる。

「雨中さぎ(No.051)」

黒い背景に白のサギが浮かぶ。そこに今日みたいな雨が降っているのだろうか。ポスターにして部屋に飾りたくなるような先進的な絵だった。あとで物販を探そう。

第3章「幕末明治」では思わず「……え?」とこぼれた。

「五聖奏楽図(No.074)」磔にされたキリストが扇子と鈴をもっている。それだけでも怒られそうなのに、その足元には釈迦・孔子・老子・神武天皇が楽器を持っている。

『聖☆おにいさん』みたいなことを描いた人が、まさか文明開化の日本にいたとは。なんとおおらかな想像力だろうか。

第4章「戯れる」は鍾馗と鬼が多く描かれていた。とにかくその鬼が愛らしい。

小さくて、丸っこくて、鍾馗に片手で持ち上げられたり、投げ飛ばされたり、蹴り上げられたり、河童をおびき寄せるおとりにされたりと、散々な扱いであった。しかし、かわいい。

第5章「百鬼繚乱」絵巻物からあふれ出してきたかのように、たくさんのガイコツや妖怪、幽霊の類が描かれておりにぎやかだった。

しかし「百鬼夜行図屏風(No.142)」など多くの妖怪が描かれていたのに、室町時代ごろの絵巻でよく見た琵琶や三味線の妖怪の姿が見つけられなかったのは不思議である。

「地獄大夫と一休(No.129)」は、着物の柄に描きこまれた地獄の風景が細かく、現物を見れてよかったとしみじみと思った。きっと図版では、地獄大夫の右袖に描かれた筆を持つ老人が、どことなく怪しい黄色のメガネをかけていることに気付かなかっただろう。

物販は洋装のガイコツが描かれた枡に惹かれたけど、「枡酒はしないなぁ」と思い直して断念。代わりにマスキングテープと図録を購入してホクホク。

▼「鬼を蹴り上げる鍾馗(No.106)」のマスキングテープ

▼今回の見学メモ

アップルパイでも食べて帰ろうかな。

それでは、これにて。ドロン。

文月詩乃
「やってみたいをカタチにする」をモットーに日々試行錯誤中! 「行ってみたい!」は47都道府県を訪ねる旅に、「引きこもりたい!」は日々の事務処理を仕組み化することで実現させることを目標に活動しています。2017年8月より、フリーの「事務処理屋」としての活動を始めました!